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福岡地方裁判所 平成2年(わ)880号 判決

本籍

福岡市城南区片江三丁目二八番

住居

同区片江三丁目二八番一九号

不動産取引業

前田徳松

大正二年七月一一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官廣上克洋出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡市中央区西中洲一二番一三号樋口ビル二〇三号所在の愛晃産業株式会社(代表取締役川添茂)事務所において、同会社の名義を用い個人で不動産の売買及び仲介業を営んでいる者であるが、自己の所得税を免れようと企て、昭和六二年二月ころ、福岡市博多区住吉三丁目二三番地及び二四番地の土地、建物を各所有者から愛晃産業株式会社名義により合計三億一九八八万円で買い受け、これを他に転売したのに、右愛晃産業株式会社名義による買受代金が合計五億八九八二万四〇〇〇円であると仮装して、自己の転売差益の一部を除外し、簿外預金を設定するなどの方法で所得を秘匿した上、実際の昭和六二年分の総合課税の総所得(事業所得)金額は一九二五万三〇七七円、分離課税の事業所得金額は二億一五三九万九五九五円であるにもかかわらず、昭和六三年三月一四日福岡市早良区百道一丁目五番二二号西福岡税務署において、同税務署長に対し、昭和六二年分の総合課税の総所得(事業所得)金額は五〇三二万〇〇二二円で、これに対する所得税額は二二三三万〇七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成二年押第二二三号の1)を提出し、同年分の正規の所得税額一億四四九五万〇四〇〇円と右申告税額との差額一億二二六一万九七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書二通

一  岩本キクヱ、末宗弘子、伴利行、杉岡治土、大淵泰範、柴田成太、今林愛子、本村勲、川添茂(二通)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官石田光好作成の脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料

一  押収してある六二年分の各所得税の確定申告書一綴(平成二年押第二二三号の1)

(法令の適用)

該当罰条 所得税法二三八条一項、二項(懲役と罰金を併科)

労役場留置 刑法一八条(罰金刑につき)

執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項本文

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 森田富人)

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